『神様のカルテ2』〜言わなきゃならない言葉も 言わなくたってわかる言葉も

神様のカルテ2』(2014)   上映時間 116分

原作:夏川草介神様のカルテ2』

監督:深川栄洋

脚本:後藤法子

撮影:山田康介

出演:櫻井翔 宮崎あおい 藤原竜也 池脇千鶴 柄本明 他

 

公式サイト:http://www.kamisamanokarute-movie.jp/

 

※ネタバレしています。

 

前作はちょっと肌に合わないところがあったのだが、この二作目はその一作目でちょっとばかりひっかかったところすべてが解消されていて、とても嬉しかった。

まずとてもテンポがよいのが素晴らしかった。2時間以内の長さの中で三組の夫婦のエピソードはどれも過不足なく描かれつつ有機的に作用していて、素晴らしいクライマックスに至るまで、本当に見事な構成だった。

また演出も、前作とは大きく変わっていて、最初はカメラが近く、ずっとこの調子でいくのだろうかと心配になるくらい顔や手元、医療器具などのアップのショットが間断なく続き、見ているこっちもいやおうなく緊張感を強いられるのだが、物語に呼応して、その近視眼的な距離は伸びたり縮んだりしながら、貫田夫妻の星空のシーンで宇宙規模の俯瞰にまで導かれることになる。その映画の道程がそのもの人の生を表しているようで、嗚咽するより他なかった。

二作目ということで、主役をはじめメインキャラクターには馴染みの顔に再び会えたような温かい感慨があったし、出番がたとえ少なくとも、その背景を自然と察することのできたのも良かった。私としては、一作目大いに不満だったイチとハルという夫婦に、人間味を感じられたのがとても嬉しかった!宮崎あおいはそのインタビューで「もっと人間味があってもいい」とハルに物申していたが、いやいや、1に比べたら格段に人間味が出ていたと思う(そういう、宮崎あおいのこの役に対するささやかな抵抗のおかげかもしれないけれど)。あまり感情を表に出さないこの良妻は、一作目ではまるで回想の住人のように儚かったが、今作では存在感がしっかりあった。表情に一瞬よぎる影や、ふとした時のしぐさなどに、彼女が本当はどう思っていて、しかしその先を察してそれをもう一度心の奥に収めていく、そんな心の動きが見て取れる。彼女は何も思っていないわけではなく、思って、かつ言わずに飲み込んでいるのだということが今作では痛いほど伝わってきた。

それは夫たるイチにも同じことが言える。自分の思う理想の医者であらんとし、どのような労苦も厭わず仕事に打ち込む彼にも、見て見ぬふりをしていることは確かにあって、それは今作、藤原竜也演じる彼の親友によって暴かれる。図星を突かれて感情を荒らげるイチ。一作目の優しく立派でセンシティブな彼も悪くはなかったが、こういった親友だけに見せる姿に、私はいっそう彼を好きになった。

今更言うまでもなく、圧巻だったのは柄本明演じる貫田医師の大往生。パンフレットにあった脚本家の言葉に「命の期限を切られたら医者だってきれいには死ねないというところを表現したかった」とあったが、まさにその言葉通りを演じきっていた。

夫婦の愛情を軸にしながら、友情も大きなポイントになっているのも良かった。イチとタツ、貫田と高山の関係はもちろんのこと、ハルと千代や、イチと男爵、病院スタッフの人間関係には(2作目だということを考慮しても)感じ入る事が多く、短いセリフの中にもその人を感じさせるニュアンスがとてもよく込められていたように思う。

 

藤原竜也はもともと好きな役者なのであるが、非日常ではない設定、しかも子煩悩な父親という、彼ではあまり見ない役柄であったこともあってとても新鮮だった。しかし違和感なく、こういうフツーの役*1でももっと見たいと思った。この映画は、彼の演じるタツと櫻井翔演じるイチの親友関係というのがとにかくしみじみと心に染みて、強気エリートの彼が一番苦しい時に選んだのがイチのいる病院だったという設定だけで感極まってしまう私である。

 

 

 

 

*1:とはいえ、映画の終盤、彼がトレンチコートを来て夜のネオンサインの前に立つシーンのその佇まいは尋常でなくかっこよく一見の価値ありです。